現在から未来へと向かう明確なロードマップ
9つの研究分野と7つの課題
ELSIでは「世界最高峰の研究水準」を達成するため、現在から未来へと向かう明確なロードマップを設定しています。ロードマップは、大きく3段階に分けられます。
第1段階として、ベースとなる9つの「研究分野」を設定しています。それぞれの分野における世界トップレベルの研究者を招聘し、バーチャルではない、研究者が物理的に結集した組織を構成することで、既存の研究領域の壁を乗り越えた真の異分野融合を実現しようとしています。
第2段階として、この9つの研究分野が協力し合いながら、「地球と生命の起源」に迫るための具体的な課題を7つ設定しました。主に初期地球に焦点を当て、その形成とともに生命がどこでどのようにして生まれたのかを探ります。また、近年急速に発展している複雑系科学の成果や知見を取り込むことにも留意しています。
ELSI独自のセオリー、モデル、シナリオを提示
こうした第1段階、第2段階を踏まえて、到達目標としての第3段階があります。
第3段階はさらに、中間目標と最終目標の2つに分かれます。中間目標としてはELSI独自の「地球形成セオリー」「初期地球環境モデル」「生命起源シナリオ」の提示を目指します。これらに関してはすでに多くの理論や仮説が提示されていますが、断片的であったり、関連性が意識されていなかったりする傾向があります。
ELSIでは、そうした理論や仮説を検証し、また自ら提示するとともに関連性を意識したアプローチを重視。そのことによって、世界における「地球と生命の起源」についての研究ハブを目指します。
さらに最終目標として、21世紀のフロンティアである、宇宙における「生命惑星分布の統合モデル」を構築することを掲げています。
Top-down(現在から過去)とBottom-up(過去から現在)の統合アプローチ
9つの研究分野
ロードマップの第1段階で設定された9つの「研究分野」の概要は下記の通りです。いずれも複数の専門領域を含んでおり、9つの研究分野ひとつひとつを見れば、それ自体がひとつの融合研究となっています。
また、「地球深部科学」から「合成生物学」までの8つは、主に用いられる研究手法によって、Top-downアプローチとBottom-upアプローチに分けられます。さらに、そこに新しい研究手法であるスーパーコンピュータによる計算科学のアプローチを特徴とする「複雑系科学」が加わることで、各分野の融合研究がより一層、スムーズかつ強力に進むことを目指していま
- 地球深部科学
地球のコアと下部マントルの化学組成を理論と実験から考察します。 - 惑星形成論
ガス・ダストの原始惑星系円盤からいかに惑星が形成されたかを理論的に理解します。 - 地質学・地球化学
深海堆積物などの地球史試料を用いて、現在にいたるまでの環境変化を探ります。 - 地球外天体の観測・探査
近年、急速に進みつつある地球外惑星の観測をさらに深めます。 - 地球微生物学・生理学
極限環境に生息する微生物から初期地球で生まれた生命のあり方を探ります。 - ゲノム環境データベース
初期地球で発生した生命の遺伝子セットを求め各種情報をデータベース化し研究します。 - 前生物化学
生命の元となるペプチド、原始RNA、原始細胞膜の化学的形成プロセスを探ります。 - 合成生物学
生物に類似した分子やシステムを人工的につくりだし、生命現象の仕組みを探ります。 - 複雑系科学
生命誕生、惑星形成、地殻形成など複雑な現象を数理モデルを構築してシミュレートします。
7つの課題
- 初期地球の形成要素
初期地球を形成した物質の組成を、原子レベルから考察します。 - 初期地球の地殻・マントル・核
マグマオーシャンから、コアとマントルへの物質分化を再現します。 - 初期地球の海洋と大気環境
生命が誕生した初期の海洋と大気の組成やメカニズムなどについて、検証可能なモデルを構築します。 - 地球-生命システムの共進化
生命誕生後の、生物進化と地球環境変動の因果関係を追求します。 - 前生物分子の地質学的供給
低分子から高分子を経て、前生物分子がどこで誕生したのかを明らかにします。 - 原始代謝システム
極限環境に生息する微生物の多様なエネルギー獲得システムの研究から、生命の根源に迫ります。 - 原始細胞システム
ペプチド、原始RNA、原始細胞膜の研究を通じて、原始細胞システムの誕生を探ります。