地球はその形成時に、マグマの海で覆われていたとされている。当時、次々に小天体が地球へと飛来し、地球を成長させていった。これらの天体に含まれていた金属の鉄は液体となってマグマの海の中を沈んでいき、やがて中心部に到達してコアの一部となった。その途中、液体の鉄は高温下でマグマと化学反応を起こすため、マグマの主要元素であるシリコンと酸素を取り込むことになる。その後、地球の温度は下がり、コアの冷却も進んでいく。すると、液体の鉄中に含まれていたシリコンと酸素がSiO2(石英の高圧相)としてマントルの底に結晶化する。実はSiO2はマントル深部では他のマントル鉱物よりもずっと軽い。ゆえに、100mから1kmサイズの塊となってマントル中を上昇していく。
これらのシナリオはすでにHelffrich教授と廣瀬所長らの以前の論文で紹介されている。今回の論文は、いったんマントルからコアに取り込まれたシリコンと酸素が再びSiO2としてマントルに戻ってきた場合、どのような化学的特徴を持つかを調べたものである。コアを作った金属鉄は、マントルからシリコンを取り込む際にシリコンの軽い同位体をより多く含むようになる。コアからSiO2としてマントルに帰ってきたシリコンの同位体比は、ずっとマントルにあったシリコンのそれと大きく違うはずだ。実際、隕石中のシリコン同位体比ともずいぶん異なると予想される。つまり、地表でシリコンの同位体比が軽い岩石が見つかれば、それはマントルからコアへ、そして再び戻ってきたシリコンを見ていることになるはずなのである。研究チームは、そのような岩石の発見を期待している。
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