東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の兵頭龍樹特別研究員、玄田英典特任准教授らの国際共同研究チームは、火星の衛星「フォボス」と「ディモス」が月の起源と同様に、巨大天体衝突(ジャイアントインパクト)で形成されうることを明らかにしました。世界最高解像度の巨大衝突シミュレーションによって、火星衛星がどのような物質でできているのかを理論予想しました。
その結果、火星衛星を構成する粒子の典型的な大きさが0.1μmの微粒子と、100μmから数mであることが分かりました。微粒子の存在により、衛星の滑らかな反射スペクトルの特徴が巨大衝突説の枠組みと矛盾しないことを確認しました。
また、火星衛星を構成する材料物質の約半分が火星由来であり、残りは衝突天体由来であること、さらに衛星が含む火星由来の物質の約半分は衝突当時の火星表層から50−150kmの深さから掘削された火星マントル物質であることを明らかにしまた。これは宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2024年打ち上げを予定している火星衛星サンプルリターン計画(MMX)によって、衛星から火星本体の物質を地球に持ち帰る可能性が高いことを意味しています。
本研究は8月18日発行の米国科学誌「Astrophysical Journal(アストロフィジカルジャーナル)電子版」に掲載されました。
論文タイトル:On the impact origin of Phobos and Deimos Ⅰ : thermodynamic and physical aspects
掲載誌: | Astrophysical Journal |
論文タイトル : | On the impact origin of Phobos and Deimos Ⅰ : thermodynamic and physical aspects |
著者: | Ryuki Hyodo1,Hidenori Genda1,Sébastien Charnoz2,Pascal Rosenblatt3 |
所属: | 1 Earth-Life Science Institute, Tokyo Institute of Technology, Japan 2 Institut de Physique du Globe/Université Paris Diderot/CNRS, F-75005 Paris, France 3 Royal Observatory of Belgium, B-1180 Brussels, Belgium |
DOI : | 10.3847/1538-4357/aa81c4 |
オンライン公開 |
18 August, 2017
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