NASAは2月22日(日本時間の23日早朝)に、地球から39光年という比較的近い位置に存在する恒星の周わりに、地球に近い大きさの7つの惑星を発見したと発表し、大きな反響を呼んでいます。太陽以外の恒星のまわりを巡る惑星を「系外惑星」と呼び、1995年に初めて発見されて以来、すでに3500個もの系外惑星が発見され、現在では木星サイズの巨大惑星だけではなく、地球サイズの惑星も発見されるようになってきました。

この惑星系ではすでに3個の惑星が発見されていましたが、今回新たに4個の惑星が発見され、そのうちの3個はハビタブル・ゾーンを回っているということです。ハビタブル・ゾーンとは、中心星に近すぎず遠すぎず温度が適当で惑星の表面に液体の水(海)が存在できる軌道範囲のことです。気をつけなければならないのは、この惑星系の中心星は Trappist-1と呼ばれる非常に小さく暗い恒星(核融合できるギリギリ)で、太陽の1/2000の明るさで弱々しい赤外線を出す恒星だということです。したがって、ハビタブル・ゾーンは、太陽と地球の距離(1天文単位)の数十分の1という中心星に極めて近い領域になります。

メディアでは「地球に似た惑星発見!」と報じているケースもありますが、中心星は太陽とは全く異なるタイプの恒星で、惑星はそれだけ中心星に近い軌道を回っているので、「潮汐力」という効果によって惑星はいつも同じ面を中心星に向けているはずです(月がいつも同じ面を地球に向けているのと同様)。一方で Trappist-1はX線や紫外線は強く出しており、ハビタブル・ゾーンの惑星は中心星に近いということもあって、強烈なX線や紫外線を表側に受けることになります。また、このような暗い恒星のまわりのハビタブル・ゾーンの惑星は、1000キロを越すような深い海を持つ(陸はない)可能性も高いと推定されています。これらの惑星は、地球からは、とんでもなくかけ離れた惑星環境を持つはずです。

このように、これらの惑星は、地球とは似ても似つかない惑星でしょう。でも、生命はいるかもしれません。もし、生命存在条件が、水、有機物、エネルギー供給の3点セットであるならば、生命を育む天体は地球に似ている必要はなく、Trappist-1の惑星でも土星の衛星のエンケラドスでもよくなります。系外惑星や地球外生命を論じるときには、「地球中心主義を脱却」して考えなければなりません。

※参考図書 「系外惑星と太陽系」(井田茂:岩波新書 2017)

井田茂
専門:惑星形成論
地球生命研究所 教授・副所長

【広報室より】
「ハビタブル」であるためには「適切な温度」だけではなく、惑星を紫外線などから守り大気と海洋を保持するとされている「磁場」の存在も重要であるとの指摘が多くの研究者からなされています。NASAの発表と時を同じくして22日、当研究所の廣瀬敬教授らにより、初期地球における磁場の生成メカニズムの解明に結びつ重要な研究成果がネイチャーに発表されました。こういった成果が蓄積されることにより、今後、地球と生命の起源を探る研究領域にますます注目が集まるのではないでしょうか。